のぬふ

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2005-10-24

[]「駿河御前試合南條範夫

読みたい読みたい読みたすぎるぞと思い待ちこがれて、ようやく読めたのでこのような期待感を持って読むときには外れたときの落胆が大きいものだよなと思って読んだのだけれども、これが非常に面白かった。

まず真剣勝負って、真剣で斬り合うことなんだなぁ…と当たり前のことを考えてポワーンとなった。因縁があるからこれはもう殺し合うしかあるまいというのはシンプルでよろしい。十一試合全てにおいて、そこに至るまでの因縁があり、大概は女性が絡んでくるのだけれども、そこにちょうど良く気の狂った殿様が真剣での御前試合が見たいということでこりゃもうちょうどいいやって感じで殺し合うわけですね。需要と供給。

というか、タイトルに御前試合とあるけれど、試合は試し合いであるから殺し合いは厳密に言うと試合じゃないですね。誰かの受け売りですけど。じゃあ死合いとでもいうか。どうでもいいか。

どうしても読んでいる内にシグルイとの比較をしてしまうというのはシグルイヤーの人間としては避けられぬ所なのですが、第一試合の「無明逆流れ」だけを読むと、ああ、山口貴由先生はこの話をこう解釈して、さらには凡人には見えぬ行間を読みまくった上で、ああいった肉付けをしておられるのだ…という「若先生は偉大なり」という結論にいってしまいがちだとは思うのですが、全編通して読むと、ああいう話になっているのも合点がいくような気がする。

なんというか根本に流れているものの共通点が多いというか、この時代ならではの奇人変人達の思考やら行動を読んで、なおかつ表現能力に優れた人間であればどう考えてもまっとうな話になるわけもなく。正気にては大業ならずというか。やはり原作あってのシグルイであるなと感じた。

小説の話に戻ると、もう少し普通の剣豪小説の類と思っていたのですが、実際の試合の描写は実に淡泊でありました。第一試合においては拍子抜けしてしまうぐらい。ただ読んでる内にそういうもんだと理解していくので問題はないのですが、描写が淡泊だからといってつまらないのかというと、淡々としている分凄惨というか生命の軽さみたいなものが強調されている感じがして、テンポのいい文章と相まって非常に効果的な感じになっていると思われます。

とりあえず一読して印象に残っているのは、ガマ剣法と峰打ち不殺あたりです。ガマ剣法は主人公の精神のひねくれ具合が、峰打ちはお前ちょっと考えれば解るだろうという浅はかさがたまらない。もちろん無明逆流れも良かったです。ネタバレしましたが原作を読んでシグルイもより楽しめるというか、より深みが増した。話としては総まとめ的な無惨卜伝流も良かったです。

しかし一番インパクトに残っているのがマゾヒスト侍であるというのはどうかと思いましたけれども。あんなの反則でしょう。しかもその男の心情を唯一理解したのが藤木源之助て。出来すぎておる喃ですよ。いやよく解らないですけど。爽やか虎眼も別の意味でインパクトあったけれど。あとは謎の人物車大膳か。誰だよいきなり…という感じですが、南條先生の他の小説に出てくるキャラクターだそうです。相当の変態らしいので今度読んでみたい。

なんか感想書いてる内に話がそれてしまったけれども、相当面白い小説でしたよこれは。最後の大オチ読んで思わず笑ったもの。それでこそという感じだった。陰の主役である徳川忠長の振る舞いも素敵でありました。

駿河城御前試合 (徳間文庫)

駿河城御前試合 (徳間文庫)

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